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多角的な取り組みで“ゴム印製造量日本一”の矜持を守り抜く|東京製版

Update: 2025.01.10|CategoryTOPICS, よみもの

東東京の多くの産業を生み出してきた荒川。そのほとり、京成押上線八広駅からすぐのところにある3階建ての建物が東京製版の本社だ。多数の機械が立ち並び、さまざまな音を打ち鳴らしている。

「私たちは学校や店舗・企業向けのゴム印を製造する会社です。ゴム印業界では製造量日本一を誇っているんですよ」

その日、案内してくれたのは遠藤章光常務取締役と横田純治取締役本部長の二人。遠藤さんは創業者の子息で勤続30年ほど、横田さんは勤続33年ほどで、長きに渡って会社の推移を見守ってきた人物たちだ。

創業は1976年。先代が現本社の近所にあった民家を改造して製版機を設置し、ゴム印製造をスタートさせた。

「当社の売上の約80%を占めているのが、創業時から続いている別製のゴム印です。1つひとつオーダーを受け、社名や個人名を示したゴム印を製造しています。全国で販売しているはんこ屋さんや問屋さんから注文を受けて卸しています。そのほかに印章にまつわる事業として、内部にインクを浸透させた浸透印が15%、インクを浸透させていない印鑑が5%といったところです」(遠藤さん)

以前は業界の慣行として、別製のゴム印の製造とその他の印章の製造で企業が分かれていたそうだが、近年はどちらも取り扱うところが増えていているとのこと。東京製版は2005年に業界最大手のサンビーグループに加入して以降取り扱い種別を拡大させている。

“ゴム印製造量日本一”に輝いた秘訣を伺ってみると、製造システムにこそ強みがあると教えてくれた。

「品質にもこだわっておりますが、大きくは受注から生産に至るまでのシステムに特徴があると考えています。当社が取り扱うゴム印は、同物受注も少なく、ゴム印の大きさも、納期もバラバラです。小さなゴム印ひとつだけで製版していてはコストが高く付いてしまいますから、材料も時間も無駄なく製造できる仕組みが必要で、複雑な要素を踏まえて効率よく製造できるシステムを構築したのです」(遠藤さん)

パソコンで製版データを見せてもらうと、ひとつの版の中にさまざまな印章デザインが存在し、ブロック積みゲームのように隙間を出さないようレイアウトされているのがわかる。

「ひとつの版に複数の印章を入れるほど原価は安くなりますが、かといって無理に入れようとすると後の作業効率が悪化するケースもあります。そのため、トータルのバランスを考慮しながら作り込む必要があるんです」(横田さん)

「パソコン上だけでなく、人手を介した工場内の製造プロセスもそうですね。販売管理のシステムとも連動させていますので、営業においても強みを発揮できています。複数からの依頼でも最効率の製造方法をすぐに割り出し、実行できる企業はそう多くないと思います」(遠藤さん)

東京製版はこうしたシステムがあるからこそ、多品種小ロットの別製印を迅速かつ高品質に提供できている。

業界内で秀でた存在感を放つ東京製版だが、取り巻く環境は厳しさを増している。業務効率化を目的としたデジタル化やDXが“ハンコ文化”の逆風となり、コロナ禍におけるリモートワークの推進がその動きを加速。一部で、印鑑は時代の流れに反する象徴と見なされるまでに。

「業界自体、かなり疲弊しています。事業を畳んでしまった同業他社は多く、そこの代わりを当社が担うことで前年度売上をどうにか維持できているという状況です」(遠藤さん)

もともと社会変化の影響を受けやすい業界ではあるという。金融機関の吸収合併が盛んに行われた時代は別製印の需要が高まり、インボイス制度がスタートした2023年も適格請求書発行事業者であることを示すための別製印が求められた。半面、年賀状用のゴム印製造は10年以上前にストップし、学校の出席簿や通信簿で使われていた生徒名のゴム印も教育現場のデジタル化によって減少している。

こうした危機を受け、2024年からBtoCの新規事業としてオリジナルプロダクト「RUBBERTAG(ラバータグ)」の販売をはじめた。ゴム印と同じ製造技術で作ったタグで、既製品の他にロゴや名入れが可能なカスタムオーダーも受けている。

「私どもの技術力を活かしてなにか作れないかと考えた末、外部会社協力のもとこの商品にたどり着きました。同業他社ではこのクオリティでの製品化は難しいはずで、オリジナリティは高いと思います」(横田さん)

「ただBtoCははじめての試みで、展開に苦労している最中です(笑)。地道に広げていくしかないかなと思っています」(遠藤さん)

オリジナルプロダクトの展開には「自社の認知を広げるという目的も大きい」と遠藤さんは話す。“ゴム印製造量日本一”である東京製版製のことを一般消費者にも認知してもらえれば業界内での存在感はさらに高まり、さまざまな可能性が広がるはず。東東京モノヅクリ商店街に参画した目的も同様で、SNSを活用した企業ブランディング施策を企画している。

「私たちの製品ははんこ屋さんや問屋さんを通して卸していますので、実際に使用するお客様にまで東京製版の名前は伝わっていません。しかし、印面不良や背見出しの汚れが出ないよう配慮するなど、品質にはかなりの自信を持っています。他と比べたときに東京製版を選んでもらえるよう、これからいっそう認知を高めていきたいと考えています」(遠藤さん)

INFORMATION

株式会社 東京製版

〒131-0041 東京都墨田区八広6丁目36−15
TEL:03-3610-3325
URL : https://www.tokyo-seihan.co.jp/