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熟練の木工技術で顧客のニーズに応える|有限会社アジア工芸

Update: 2019.01.10|CategoryTOPICS, よみもの

江戸川区篠崎町。周りを住宅に囲われた場所に、アジア工芸の本社工場がある。天井の高い作業場では木材を加工するための設備が並び、木の香りに包まれていた。
会社は1965年に創立。二代目にあたる代田元則代表取締役に話を聞いた。


アジア工芸は、商業施設や店舗に設置する家具・什器の製造、特注家具の製作などを行っている企業だ。
「さまざまな木工製品を取り扱っています。現在、仕事のおよそ7割はディスプレイ家具や陳列家具の製造。納め先は多種多様ですが、アパレルブランドさんの店舗やハウスメーカーさんのショールーム向け製品を手がけることが多いですね。機能だけでなく意匠も重視するケースがほとんどで、見た目の美しさにもこだわっています。すべてフルオーダーメイドで、クライアントが希望したとおりの製品を作り上げ、店舗まで取り付けに伺います」
ときには内装全般を請け負うこともあり、飲食店や物販店、ペットショップなどを手掛けてきたという。


アジア工芸の強みは、特殊な形状の家具も製造できることだと代田さんはいう。
「市原の工場にNCルータを備えており、複雑な曲線を描いたもの、癖のある形の加工にも対応しています。もちろんこれは、オペレーターの技術力と経験があってこそ。状態や木目など木材の性質を熟知し、どのようなプログラムを入力すれば最適な結果を得られるのか、機械の仕組みも深く理解できていることで、さまざまなご要望にも応えています」

 

代表となってからは取引先を増やし、事業を拡大してきた代田さんだが、当初は経営を引き継ぐつもりはなかったそうだ。
「幼い頃から自営業のいい面と悪い面を見てきました。特にお金での苦労を身近に感じ、若い頃は外の企業に勤めてお給料をいただくほうが楽だろうと思っていたんです」
しかし、高校卒業後はオートバイのレーサーとして情熱を費やし、会社員として務める時間も取れない状態に。見かねた先代から「時間があるときだけでもウチで働け」と声を掛けられ、そのまま家業を引き継ぐことになった。
乗り物好きが長じ、現在では新規事業の取り組みとして一般向けにハイエースのカスタムも行っている。
「私もハイエースオーナーなのですが、寝泊まりできるキャンピング仕様にしたり、釣りの道具やオートバイなどを乗せられるようにしたりと、改造を希望している方は多いんです。自分ごとだとなかなか腰が重いのですが(笑)、みなさんのニーズに応えられるのはうれしいですね」

個人向けにハイエースのカスタムサービスを導入したが、基本的にはBtoBのビジネスがほとんどだ。消費者向けビジネスを拡充すべく、今回東東京モノヅクリ商店街に参画。包丁立てとワインラック、まな板といったキッチンツールを作った。
「家具の製作過程で生じる端材は、これまでお金をかけて処理していましたが、これをどうにか再利用したいと考え、今回商品にしました。外部デザイナーさんから図案をいただき、当社の加工技術を駆使してユニークな造型を実現しています」
一部メーカーの包丁が入れづらい、想定よりも傾斜してしまう、といった問題には都度対処し、5~6回のトライ・アンド・エラーの末に完成へ漕ぎ着けた。
「製造に手間がかかるので大量生産は難しいのですが、売れてほしいですね。まだ理想の段階ですが、今後は消費者向け事業を拡大し、企業向け事業と肩を並べるくらいの売上規模にできればと考えています」


現在、同種木工業の規模は縮小傾向にあるという。新規出店数が減少しているのと、大規模施設は安価な海外メーカーに発注しがちだからだ。
「日本の職人が持つ技術力は世界有数だと思っています。しかし、その価値が実際の市場でなかなか反映されていないのは、残念なことだと思います」
改めて日本のモノヅクリの底力に気づいてもらうには、製品に付加価値を与えることだと代田さんは確信している。
「同じようなモノを作っていては、海外に太刀打ちできません。日本の職人さんには、0.1mmの厚さの違いがわかる感覚や素材の微妙な違いを見極める力があり、製品の完成度はずば抜けています。簡単には真似できない領域であり、そうした実力を活かしたモノヅクリに励んでいきたいと考えています」
卓越した技術力で、アジア工芸はこれからも顧客のニーズに応えていく。

 

左が代表の代田元則さん