玉の肌石鹸は明治25年(1892年)、江戸の頃から本所の名称で知られた由緒ある地(現在の墨田区・緑)に社名「芳誠舎」として誕生しました。化粧石けんの製造を開始して以来、創業120年以上に及ぶ歴史と伝統を誇る石けんの専業メーカーです。長い歴史の中で培われ続けてきた優れた製造技術で、1960年代後半から高級石けんの受託生産を始め、世界的なブランド製品の製造も数多く手がけてきたそうです。
JR両国の駅から錦糸町駅に方向に10分ほど歩くと、住宅街に大きな工場が現れます。
それが玉の肌石鹸の本社で、今もこの自社工場では一日最大10万個の石鹸を生産しているそう。
実は墨田区は石鹸の町で、誰もが名を知る大手石鹸会社の研究所や工場もあるほど。その理由として隅田川から延びるたくさんの小さな支流がポイント。石鹸は元々、油から作りますが、船で油を運ぶなど原料輸送に便利だったので、この地区に石鹸を作る会社が集まったそうです。
昔ながらの製法を貫くにはこだわりがある
玉の肌石鹸は作り方にもこだわりがあります。今回は営業部も竹下さんにお話を伺いました。
――玉の肌石鹸の作り方の特徴はどういったところにあるのでしょう?
竹下「今も昔ながらの製法で石鹸を作っています。石鹸は油と水酸化ナトリウムを混合し、加熱反応させて作ります。一度、石鹸成分のみの小さなチップ(石鹸チップ)を作り、それから香料や色を混ぜるのですが、このベースとなる石鹸チップ自体を製造する会社は、現在ではあまり残っていません。石鹸チップの多くは、原料となるパームヤシが多く栽培されているインドネシアやマレーシアなどで作られているので、多くの会社ではチップの状態で輸入して、そこから香りや色を練りこんで商品化しています。石鹸チップから作る技術や設備が残っているのは、日本では数社しかありません。」
――昔ながらの製法を貫く理由についても教えてください。
竹下「油との配合を自社で調節できるのは強みですよね。石鹸は石鹸チップの性質によって8~9割の使用感が決まってきます。保湿剤や添加剤を入れることで使用感は変えられますが、一番大事なところはベースとなる石鹸チップの性質なので、そこを自社で調整できます。また油から石鹸を作る場合は、グリセリンなど天然の保湿成分も入るので、使った時の使用感が肌にやさしい石鹸になるんですよ」
贈り物にも喜ばれる“TAMANOHADA SOAP”インバウンド需要も高い
玉の肌石鹸では2003年から自社ブランド“TAMANOHADA SOAP”を販売している。一度は自社ブランドをストップし、OEMのみになった時代もあったが、親の世代には高かった認知度を今の世代にも浸透させたいという思いもあるのだ。
竹下「現在では丸い固形石鹸のTAMANOHADA SOAPが人気ですね。植物性由来の成分から作られているので、泡立ちに優れ、しっとりと洗い上げてくれて肌にも優しいのが特徴です。香りにもこだわっていてラベンダー、オレンジ、ムスク、ローズ、ガーデニア、フィグの6種類あります。ギフトにも喜ばれていますよ。」
また“洗顔は石鹸で”という層も根強くあることから、植物由来の肌にやさしい洗顔石鹸も多く取り揃えています。
最後に今後の展開について伺ってみました。
竹下「最近はインバウンドとして、海外からの観光客向けの需要も増えていますし、昨年はアジア圏での売れ行きが好調だったので、海外を中心にもう少し打ち出していければ考えております。玉の肌石鹸は“使って楽しい、使って面白い”をコンセプトで作っていますので、魅力的な商品をこれからも生み出していければと思います。」