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手作業によるモノヅクリで、一点の曇りもないシューケア用品を製造する。|谷口化学工業所

Update: 2019.12.26|CategoryTOPICS, よみもの

海外を旅して回ってきたという初代が、これからの革靴の需要増を見込んで靴クリームメーカーを興したのが、1910年のこと。そうして生まれた「ライオン靴クリーム本舗」は、日本で一番古い靴クリームメーカーとして、数多くの古参のファンを抱えている。

「調べてみたところ、1900年代初頭に上野公園にやってきたライオンがブームになり、それにあやかって命名したようです」と話してくれたのは、初代から数えて5代目にあたる谷口弘武代表取締役専務。「百獣の王というような、力強いイメージにも惹かれたようです」

 

現在、谷口化学工業所ではシューケアにかかわる製品をトータルで扱っている。ブラシなどの一部は外部で生産しているが、乳化性靴クリーム、油性靴ワックス、靴クリーナーといった靴磨きの基本となる道具の製造は、100年以上の伝統を堅守。いまなお手作業での製造を中心に据えている点が、他社にはない強みだ。

たとえばクリームの充填には、底注ぎ、中注ぎ、上注ぎと、3度に分けて丁寧に注ぎ込む「3度注ぎ」を実施。それにより、均一に整った表面の仕上がりや美しい艶を出すことができるという。

「靴クリームの主成分はロウであるため、注入後しばらくすると収縮が起こります。それによって生じる見栄えの悪さを回避するために、3度に分ける必要があるのです。機械だと歪に収縮したり、瓶内で飛び散った部分が悪目立ちしたりすることも。なにより、蓋を開けたときの美しさには自信があります」

 

底注ぎしてから次の注ぎを行うまでにどれくらいの時間を置くか。どれくらいの量を充填するか。そこには製品の種類だけでなく季節や気候、その日の天気といった複雑な要素と、熟練職人の勘も活かされている。最後の上注ぎでは、1mm単位での調整になるという。

さらには製品のラベル貼りや検品作業もすべて手作業。蓋をピッタリ締めたときに、蓋のラベルと瓶のラベルの向きがキレイに合わさっているのも、ひとつひとつ人の手で行っているからこそだ。

すべてにおいて妥協をしない。その姿勢が、「ライオン靴クリーム本舗」のブランド力を高めている。

 

新たな取り組みにも積極的だ。

たとえば高級ラインの「エクセレントシリーズ」の2019年新製品では、ニオイの少ない有機溶剤に変えるとともに独自開発した香料を配合。シューケア用品のほとんどは石油系のニオイがするものだが、このシリーズではまるでフレグランスのような芳醇な香りを閉じ込めた。

「玄関で靴磨きをされる人も多いのですが、そうすると玄関内に石油臭が充満してしまいがち。この製品ならそうした不満を感じませんし、リビングでも作業できますよ」

新規顧客開拓として、外部の靴ブランドと協業したOEM製品の生産や、著名な靴磨き職人の希望に合わせたシューケア用品の開発も行っている。

東東京モノヅクリ商店街では、サステナブルなシューケア用品の開発を進めている。

「一般的に靴クリームでは動物や植物の油脂を使うのですが、たとえばそこに増えすぎて困っているというエゾシカの油脂を使うことで、環境保全や持続可能社会に貢献できるかもしれません。そういうチャレンジをしていきたいと考えています」

 

 

多様化が進み、創業時から比べれば革靴の需要は落ちている。

「スニーカーなど代替品の台頭や革靴を磨くという習慣の希薄化などは、我々にとって脅威といえる変化。その反面いいものを長く使おうという風潮は高まっており、シューケアの活躍の場は狭まったとはいえ、より濃く、深くなっていると感じています」

一方、個人所得が増えている中国では革靴利用者が増えており、いずれは海外進出も検討していきたいという。

「適正価格のもとで新たな価値も付加し、望まれている方に魅力的な製品を届けるのが私達の役割です」

 

INFORMATION

株式会社谷口化学工業所

〒130-0005 東京都墨田区東駒形4-14-2

TEL: 03-5611-7351

https://www.taniguchi-kagaku.com/