JR浅草橋駅から徒歩2分、眼下に神田川を見下ろす中層ビルの一角にあるスターポイントの本社。80平米ほどの室内には事務作業用のデスクや応接スペースのほか、複数台の機械が並んでいる。どれも人の背丈もないくらいの大きさだが、一部が非常に機敏な動作を繰り返していて、一目で精密機械なのだとわかる。

「僕たちの会社は、レーザーマーキングという二次加工のメーカーなんです。自分たちの製品やブランドはなく、お客様が製造したものにレーザーで加工するという仕事。東東京モノヅクリ商店街の中では、けっこう変わっている業者になるんだと思いますよ」

代表である森田真通さんは、そういって笑顔を見せてくれた。

スターポイントの設立は2019年と、比較的若い会社ではある。しかし、森田さんは前職でレーザー業界に20年以上勤めてきた経歴を持ち、レーザーマーキングの道のプロフェッショナルだ。

「そこは二次加工だけでなくメーカーの側面もあり、当初は機械製品の営業やテストサンプルの作成、機械製品の製造とメンテナンスなど一通りの営業サポートに従事していました。やがて二次加工のほうに仕事が移り、レーザーマーキングのスキルを磨くようになったんです」

業務を極め、さらなる可能性を模索した結果、独立という選択肢が見えてくるようになったと話す森田さん。前職を離れ、2017年から個人事業として独立を果たした。

「そこそこの初期投資が必要な事業ですが、仕入れコストなどは掛かりませんので、わかりやすい商売だと思います。最新の機械も導入し、前職ではできなかった加工も行えるようになりました」

独立前から付き合いのあったクライアントの注文を受け、順調に事業規模を伸長。当初の計画通り2年後の2019年に法人化を果たし、現在は2名の従業員を抱えている。

レーザーマーキングとは、レーザー光を照射して対象物の表面を剥離する、焦がす、酸化させる、溶かすといった変化を生じさせて印字する技術だ。ブランドのロゴマークや企業・商品の名称、表現としてのパターンなど、さまざまな用途に用いられている。

「主に取り扱っているのは、記念品などに用いられるノベルティグッズと一般的なブランド製品、そして品番などの印字が必要な工業・医療向け製品の3つ。売上割合は6：3：1くらいです。ただ、ノベルティグッズは時期や季節などの不安定要素が大きいことと、工業・医療向け製品にはもっと大きな伸び代があると考えており、今後はもっと均等な割合へ変えていければと考えています」

会社設立直後はコロナ禍の影響から厳しい状況だったが、まもなく売上も回復。現在は堅調に成長し続けているという。

作業そのものはレーザーマーカーと呼ばれる専用の機械で行われるが、機械があればなんでもできるわけではないのだと森田さんは説明する。

「取り扱う機械の特性や加工する材料の性質、印字面の形状などを踏まえ、さまざまな調整を行わなければなりません。たとえばアルミ材を加工するにも、レーザーの当て方によって印字面を白くも黒くもできます。そのほかにもガラスやシリコン、樹脂、木材、革など材料によって光の吸収率はすべて異なりますので、条件設定や使用する機械の種類などを最適化させる必要があるんです」

希望の仕上がりを実現するには専門的な知見や経験が不可欠であり、それらを持ち合わせているのがスターポイントの強みだ。

「スプーンのヘッド部分の曲面に精密な印字を施したり、マグカップの内側に印字したりと、難度の高い印字を行えるのも当社ならではだと思います」

東東京モノヅクリ商店街に参画したわけは、横のつながりを作りたかったからだと森田さんは打ち明ける。

「僕らはモノを持っていませんから、実際にモノヅクリをされているメーカーさんと直接的なつながりを持つことで、さまざまなメリットを受けられるのではと考えました。メーカーさんの考えを知ったり、それを受けてこちらから提案させてもらったりしています」

交流会を経て東東京モノヅクリ商店街の参加企業とつながりを持ち、シューズに使われるコルク製インソールや桐箱への加工など、すでに複数の企画が進んでいるという。

「設備を安定的に稼働させるためにも、もっとお客さんの数を増やしていきたい。毎年2割増くらいの売上を目指していきたいんです」

そうした熱意が、東東京モノヅクリ商店街に参画した大元にある。自社の存在をアピールするため、近年は産業フェアなどの展示会にも精力的に参加しているという。

「業界内でシェアを奪い合いたいわけではありません。レーザーマーキング自体の認知を広げれば、市場はまだまだ大きく伸びていくはずです。より多くの企業様に当社のことを知っていただき、可能性を広げていきたいですね」