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モノヅクリとヒトヅクリ 駒屋

Update: 2016.02.16|CategoryTOPICS, よみもの

毎日なにげなく使っている財布やキーケース、名刺入れ。
使う頻度が高いからこそ、とびきり気に入ったものを持ちたい。
大切に長く使いたいからちょっと奮発することも多いのでは?

いま手元にあるお財布も、もしかしたらこの場所で作られているかもしれませんよ。
1950年、墨田区に創業した皮革製品の製造を行っている駒屋
代表取締役の須藤文雄さんにモノヅクリについてお話を伺いました。

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(左から:駒屋の西村さん/須藤さん/大竹さん)

須藤さん「もともと墨田区は、江戸時代から革製品を扱う商店が多かったんです。
明治時代に技術開発が進み大量生産が出来るようになってからは、国営の革製造工場もこの街にあったんですよ。
弊社では革製品の企画・製造を行っています。例えばお財布を作るのであれば、お札はちゃんと入るかな。
カードは、保険証は入るかな…と使う人のことを細やかに想像しながら設計していきます。

デザイナーの新しい感性を表現しながらも、お客様が日常生活で使いやすい商品を完成させるために、デザイナー、設計、組み立てる人。それぞれの意見を戦わせたり擦り合わせたりしながら、より良いモノヅクリを目指して切磋琢磨しています。」

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—革製品には、量産のきかない美しい細工の入ったものや職人の高い技術が光るモノヅクリの歴史がありますが、そんな素晴らしい作品を作れる職人が減ってきているのだそう。

須藤さん「いまは、若い職人が少ないですね。駒屋としても業界としても一番の悩みです。しかも、ただ職人を増やすだけでなくちゃんと稼げなければだめ。そこも課題ですね。」

—中国にも工場を持ち駒屋の技術を中国の人たちに教えたり、新潟に工場を設立し技術者を派遣したりと、新たな職人を育てていますね。それはやはり業界の未来のために?

須藤さん「大量生産するのであれば海外に人手を求めることもあるかもしれませんが、そうでなければ難しいですよね。それに『なんといってもmade in Japan!』『made in Japanが欲しい!』というお客様が多いのです。

人を育成することが業績に直結するということもあります。
わたしたちの業界は修業期間が長い。一朝一夕で取得できる技術ではありません。実際に作業して失敗してまたチャレンジしての繰り返しです。そうやって地道に技術を積み重ねて、やっと一人前の職人が育ちます。

また、女性だと家庭を持つこともありますよね。でもちゃんと技術が身に付いていれば、家庭に入っても自宅で仕事をすることができる。新潟の工場では、お子さんがいる主婦の方も働いていますよ。」

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ーそもそもなぜ新潟に工場を?
地元の新聞で紹介されるなど、反響があったようですが。

須藤さん「地方の過疎化が進んでいる土地には仕事が少ないからです。ちょうど3年前、新潟へ視察に行ったのですが、市役所に行ってここに工場を建てたいんだと伝えると最初は不思議な顔をされました(笑)。
でも、こちらの熱意を一生懸命伝えると大歓迎していただけまして。いまは現地で採用した人たち10人が働いています。時間がかかっても産業というレベルまで花を咲かせることができれば。

先日は、新潟工場の人たちに東京まで来てもらい伊勢丹へ行って来たんですよ。どんな場所で売られているかを実感することで、ここに染みや傷があるとだめなんだ。糸が出ていたらダメなんだ…とイメージがふくらみ、モノヅクリへの理解が深まるんですね。場所は遠く離れていても一心同体で仕事をしていきたい。
駒屋で仕事ができて良かった。と思ってもらえれば最高です。
これからは、時代の変化に柔軟に対応できる企業が生き残っていくと思います。」

 

この日は、駒屋の工房も見学させていただきました。
若い方から年輩の方まで、かなり幅広い年齢層!

須藤さん「我が社は、やる気があって正直でみんなから慕われている人は、定年制度はありません。頑張っている先輩の背中をみることで後輩は勉強になりますし、よく皆でこの糸がいい、あの接着剤がいい。などと情報交換をしていますよ。働いていると健康にも良いようです。」

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みたことのない機材や大量の布に囲まれ、秘密基地のようでわくわく!
道具も使いやすいように、自分たちで手直ししているのだとか。
何度も作り直した試作品も素人目からみると、どこがだめなのか分からないのですが…駒屋としては売り物にならないそう。

厳しい審眼美でモノヅクリをしている姿勢を垣間みました。
技術だけでなく、人を大切に育てることが企業を育て、街づくりにも繋がっていくのだと駒屋さんから教わった気がします。

 

撮影/Kira
文/東山サリー

INFORMATION

株式会社 駒屋

〒130-0005 東京都墨田区東駒形2丁目5−14
電話:03-3625-0876
URL: http://www.komaya-japan.com/