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積極的な設備投資で靴作りの可能性を広げる|リフト

Update: 2025.02.14|CategoryTOPICS, よみもの


多くのものづくり企業が工場を構える浅草。古くから「靴の街」とも呼ばれるこの地に、靴メーカー・リフトの社屋がある。屋内には複数階にわたって大きな機械が所狭しと立ち並び、製造途中のシューズがラック内に収められていた。
「今、当社で働いているのは15名ほど。積極的に若者を採用していて、関係者からも『リフトさんは若い人ばっかりだね』とよくいわれるんですよ」
そういって応対してくれたのは、営業企画部の吉田有史課長だ。在職して10年、現在は商品企画全般に携わっていると話す。
「裏革は裏革屋に、裁断は裁断屋に……というふうに分業するのが靴作りの伝統とされ、ここ浅草もまさにそうした製造地なのですが、職人の高齢化や技術の承継といった問題からいつまで継続していられるかわかりません。そこで当社は、できることはなんでも自社でやることにしていますし、若い人に多くの技術を磨いてほしいと思っているんです」

リフトの創業は2000年。母体はビジネス向けの革靴を得意とするング製靴であり、レザーを活かしたスニーカーやサンダルを展開する一ブランドとして誕生したのがはじまり。やがてキング製靴は景気の悪化から廃業してしまうが、独自の販路を開拓していたリフトは企業として独立することになった。
「当社の強みのひとつは、さきほど話ししたようにできることはなんでもする、国内一貫生産にこだわっていることです。コストを安く済ませるため生産を海外に頼るメーカーは多いですが、労働賃金の上昇や円安傾向からどの国も単価は上がってく一方で、どんどんと遠隔地に移行せざるを得ません。クイックで柔軟な対応ができなくなり、特にシーズンごとに新作を発表するようなアパレルブランドだと不都合な点が増えてしまいます。当社はすぐにコミュケーションを取れますし、国内製造で短期納期にも対応しており、それで多くのブランドさまから信頼していただけているのだと感じています」
対応力の高さから、大手アパレルブランドのOEM製造が売上の大勢を占めているという。

設備投資を積極的に実施しているのも強みだ。多くの機械を導入し、多種多様なシューズの自社一貫生産を実現している。
「大型の自動裁断機も3台導入するなど、浅草にある他のメーカーではあまり見ないような機械をたくさん導入しています。製法としてもマッケイ製法やストローベル製法、オパンケ縫い、ターンステッチ製法、セメント製法などとやれることも多いので、こちらからも柔軟に企画提案できるのです」

古くからの“モノヅクリ”を信奉し、手仕事に固執する人も少なくない。しかし、必要以上の執着は作業を滞らせ、モノを作る機会そのものをなくしてしまいかねない。
「レザーアッパーのこがし仕上げなどなど、手作業でなければ味わいが生まれない作業もあり、職人たちが腕によりをかけて作業してもらっています。しかし、機械でも同等にできる作業ならば、機械にやってもらおうというのが当社のスタイルです。手をかけるところは手をかけ、機械に置き換えられるものは機械にやってもらう。そうした判断のもとで効率性を高めていかなければ、事業としての継続性が保てません。海外に比べると、日本はこうした視点が遅れているように感じます」

積極的な設備投資はモノヅクリの可能性を広げ、オリジナル製品の製造・販売も行っている。伝統的な技術を活かしつつ時代にフィットさせた「マーシェルシェ」や、レザーシューズにスニーカーテイストを融合させた「シーソー」というプライベートブランドを展開し、自社ECやセレクトショップで販売。革製の雪駄型サンダルの「サン駄」や見た目はスニーカーなのに履けば雪駄の「スニー駄」など、クラウドファンディングを使ってユニークな製品も発表し、話題を呼んだ。
「クラウドファンディングはもう10回くらい実施しました。普通の靴は出さず、当社でしか出せないような靴を出してます。クラウドファンディングは受注生産のため在庫リスクを抱えずに済むのが利点ですし、独自の技術を駆使することでリフトの存在を多くの方に知っていただくという認知度向上の目的も大きいですね」
現在の事業売上構成比は、OEM生産が9割、オリジナルが1割ほど。しかし、今後はオリジナルの割合を大きく高めていきたいと吉田さんは思いを打ち明ける。

東東京モノヅクリ商店街に参画したのも、オリジナルを強化するためだ。
「ひとつは、当社のプライベートブランドであるシーソーの見直しです。商品ラインナップや単価など、全般ですね。ブランディングや今後の事業計画を再構成し、競争力や魅力を高めていきたいです。もうひとつは、『スニー駄』の販売力の強化です。スニーカー内部に前坪と呼ばれる雪駄のパーツを縫い付けて履き心地を高めたもので、この個性的な製品をもっと多くの方にしっていただきたいのです」

ここ数年、浅草を含む靴業界の景気は相当悪化してきていると吉田さんはいう。
「1回あたりの受注数も激減し、厳しい状況が続いています。時代の変化に合わせ、これからも臨機応変に取り組む必要があると考えています」

INFORMATION

株式会社リフト

〒111-0025 東京都台東区東浅草2-26-15
TEL: 03-3871-68777
URL : https://www.lift-shoes.co.jp/